パクって巨匠と呼ばれるようになった人

パクって巨匠と呼ばれるようになった人

シェイクスピアが世界文学史あるいは世界の演劇史の中で、空前絶後の巨匠であることを疑う人はいないと思います。

しかし、以下の表を見ていただくと解りますが、

実は、シェイクスピアの作品のうち、元ネタがないものは僅か4つしかありません。(注)
(さらに注)すみません。長らく4つを3つと数え間違えしていました。お詫びして訂正いたします。2004/3/10 ふゆみ

彼は故意のネタ被りをやっています。

勿論、シェイクスピアの時代は今より著作権に対する意識が低かったので、そんなことができたのかもしれません。

しかし、今、この現代においてシェイクスピアがその著作の殆どを他人が書いた物を元にしていたと知ってなお、なぜ、多くの人はシェイクスピアを偉大な劇作家と認め、彼の作品を愛するのでしょうか?

シェイクスピアが元ネタにした本達は、ほとんどシェイクスピアの研究者か一部の愛好者にしか読まれないでいるのは、なぜでしょうか?

シェイクスピアが生まれたイギリスから遠く離れたこの日本でさえ、大抵の人が「おお、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」等のシェイクスピアの名台詞を知っているのはなぜでしょうか。

シェイクスピアに関するジョークに、こんなものがあります。

ある日、アメリカ人がイギリスでシェイクスピアの劇を見に行った。
そして「 シェイクスピアって格言を並べただけじゃないか」
とバカにした。

このジョークのオチはどこかって?
シェイクスピアの劇に出てくる格言・名言の類は、すべてシェイクスピアのオリジナル。
つまり、このアメリカ人は自分が今まで色んな場所で聞いた格言の元ネタがシェイクスピア作品だとは知らなかったというコト。

シェイクスピアは色んな人のアイディアをパクって脚本を書きましたが、彼ほど生み出した名言の数々を後世の作品に引用されている作家もいません。
一説によれば、「ハムレット」では、当時使われていなかった単語が600も使われているそうです。

どうしても、アイディアのパクリは許せないという方、あなたはこんなシェイクスピアをどう評価しますか?

シェイクスピア全作品(戯曲のみ)リスト
タイトル(邦題) タイトル(原題) 執筆時期 元ネタ
ヘンリー六世 三部作 King Henry VI 1590-91 ホリンシェッド「年代記」
リチャード三世 King Richard III 1592 ホール「年代記」
ホリンシェッド「年代紀」
サー・トーマス・モア「リチャード3世伝」
間違いつづき The Comedy of Errors 1592 プラウトゥス「メナエクミ」
同「アンフィトルオ」
タイタス・アンドロニカス Titus Andronicus 1593 オヴィディウス「変身物語」
セネカ「テュエステス」
じゃじゃ馬ならし The Taming of the Shrew 1593 当時流布していた「アラビアンナイト」の一部
ガスコイン「替え玉」(しかし、これは元々イタリアの劇作家アリオストの作品の英訳)
ヴェローナの二紳士 The Two Gentlemen of Verona 1594 モンテマヨール「魅せられたディアナ」
恋の骨折り損 Love's Labour's Lost 1594 特にない
ロミオとジュリエット Romeo and Juliet 1595 アーサー・ブルック「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」(※諸説あり)
リチャード二世 King Richard II 1595 ホール「年代記」
ホリンシェッド「年代紀」
夏の夜の夢 A Midsummer Night's Dream 1595 特にない
ジョン王 King John 1596 ホリンシェッド「年代記」ほか
ヴェニスの商人 The Merchant of Venice 1596 ジョヴァンニ・フィオレンティーノ「イル・ペコローネ」
クリストファー・マーロー「マルタ島のユダヤ人」など
ヘンリー四世 二部作 King Henry IV 1596-1598 ホリンシェッド「年代記」
サミュエル・ダニエル「内乱」
作者不詳の劇「ヘンリー五世の名高い勝利」
ジョン・ストー「イングランド年代記」など
空騒ぎ Much Ado about Nothing 1598 アリオスト「オーランド狂乱」
バンデルロ「物語集」
スペンサー「妖精女王」
ウィンザーの陽気な女房達 The Merry Wives of Windsor 1597 特にない
ヘンリー五世 King Henry V 1599 ホリンシェッド「年代記」
作者不詳の劇「ヘンリー五世の名高い勝利」など
ジュリアス・シーザー Julius Caesar 1599 プルターク「英雄伝」など
お気に召すまま As You Like It 1599 トマス・ロッジ「ロザリンド」
十二夜 Twelfth Night 1601 バーナビー・リッチ「軍務よ、さらば」
ハムレット Hamlet 1600 トマス・キッド「原ハムレット」
フランソワ・ベルフォレ「悲話集」
トロイラスとクレシダ Troilus and Cressida 1601-02 チョーサー「トロイラスとクリセイデ」
ホメロス「イリアッド」(英訳)
終わりよければすべてよし All's Well That Ends Well 1602 ボッカチオ「デカメロン」
尺には尺を Measure for Measure 1603 ジョージ・ウェットストン「プロモスとカサンドラ」
チンティオ「百物語」など
オセロー Othello 1604 チンティオ「百物語」
リア王 King Lear 1605 ホリンシェッド「年代記」
フィリップ・シドニー「アーケイディア」など
マクベス Macbeth 1606 ホリンシェッド「年代記」
ブギャナン「スコットランド列王記」など
アントニーとクレオパトラ Antony and Cleopatra 1606 プルターク「英雄伝」
サミュエル・ダニエル「クレオパトラの悲劇」
コレオレーナス Coriolanus 1607 プルターク「英雄伝」など
アテネのタイモン Timon of Athens 1607 プルターク「英雄伝」
ルキアノス「タイモン」
ペリクルーズ Pericles 1607 ジョン・ガワー「恋人の告白」
シンベリン Cymbeline 1609-10 ホリンシェッド「年代記」
ボッカチオ「デカメロン」など
冬物語 The Winter's Tale 1610 ロバート・グリーン「パンドスト王」
あらし The Tempest 1611 とくになし
ヘンリー八世 King Henry VIII 1612 ホリンシェッド「年代記」

参考:
戸所宏之 著「はじめてのシェイクスピア」
シェイクスピア戸所研究室


(注) この「元ネタがないものは4作品」という説は戸所氏の本によるものです。The Bard of Avon:ストラトフォードのシェイクスピアには、戸所氏が元ネタなしとしたものにも、ネタがあるように書かれていました。このあたり、研究者によって諸説あるようです)。


HOME    LINK FREELY. Written by Fuyumi    First edition: 9 Aug 2003 - Last update: 18 Nov 2005


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